コラム
要件定義の前に知っておきたい4つのポイント

Webサイトに限らず、要件定義はプロジェクトにおける「設計図」となり、これが曖昧だと、途中で迷走したり、 「完成したけど、求めていたものと違う」 ということになりかねない、非常に重要なフェーズとなります。
ただ、要件定義自体の重要性やフローについては沢山のソースがあり、なんとなくイメージはお持ちかと思いますので、今回は弊社が日々プロジェクトを進行する中で感じた、要件定義フェーズにおける名称の混同や、意外ときちんと理解されていないポイントについて抜粋してご紹介いたします。
ポイント1:要求定義との違い
まず、よく混同されがちなのが「要求定義」と「要件定義」の違いです。
「要件定義」は、Webサイト制作に関わるすべての人の認識を一致させるため、受注企業側と発注企業側との間で起こる認識のずれや、自社内で起こる認識のずれをなくしていくことを目的に設定されます。
対して「要求定義」は発注企業側が求める機能や条件を明確にするために設定します。
この段階では、何が必要か、どのような問題を解決しようとしているかについての詳細を収集し、文書化します。主に、「何を実現したいか」に焦点を当て、利用者のニーズやビジネス要件を整理します。
上記のことから「要求定義」を踏まえた上で、その要求を達成するために必要な「要件定義」をしていくという流れになります。
例えば企業がブランドイメージを向上させ、採用活動を支援する目的で新しいコーポレートサイトを立ち上げる場合を想定した例を挙げてみます。
要求定義
目的
- 企業のブランド認知度を向上させる。
- 採用ページを通じて求職者のエンゲージメントを高め、応募数を増加させる。
要求
- 企業の理念、歴史および強みを効果的に伝える内容。
- 採用情報が明確で、直感的に応募プロセスを進められる設計。
要件定義
機能要件
- 【ブランドイメージ強化】 最新のデザイントレンドを反映したビジュアルと、企業のミッションやバリューを素早く明確に伝えるコンテンツの追加。
- 【採用情報の充実】職種別の詳細説明、福利厚生、従業員の声、直感的な応募フォーム。
- 【キャリアページと応募システム】 職種ごとの詳細情報、応募条件、オンラインでの応募プロセスをスムーズに進めるための、ユーザーフレンドリーなインターフェース。
実際には、要件定義の中には上記のような機能要件以外にもセキュリティやシステム要件等多岐にわたる項目があるため、上記はあくまでその一部となりますが、要求定義の「何を達成したいか」という視点が、要件定義での「それをどう実現するか」という技術的な詳細へと具体化されます。
ポイント2:基本設計との違い
基本設計は、要件定義で決定された要件をもとに、それぞれのページの構成案やシステムの選定、構造の仕様を決めていく段階です。
前項で想定した、企業がブランドイメージを向上させ、採用活動を支援する目的で新しいコーポレートサイトを立ち上げる場合、
要求定義でブランドイメージの向上と採用活動支援の必要性が求められ、
要件定義では、これらの要求を具体化し、どのようなコンテンツや機能が必要か、どの技術が適用されるべきかが定義され、
基本設計で要件を実現するためのシステム構造や技術選定、仕様の策定が行われます。
このように各段階が連携して、最終的に企業の戦略的目標を支援する効果的なWebサイトが設計・開発されることになります。
ポイント3:「必須要件」と「希望要件」
Web制作のプロジェクトにおける要件には大きく「必須要件」と「希望要件」の2つがあります。必須要件とは、Webサイトの目的を達成するために必須の要件で、実装しなければサイトが機能しないもののことを指し、希望要件はできれば実現したい、あると便利だが、必須ではない機能等のプロジェクトの予算やスケジュール次第で検討するものとなります。
具体的な分類例としては以下のようになります。
要件分類 | 必要要件 | 希望要件 |
デザイン | レスポンシブ対応、
企業ブランディングに沿ったデザイン |
アニメーション、ダークモード対応、視差効果 |
コンテンツ | 会社概要・事業内容・お問い合わせ | 動画・FAQ・多言語対応 |
機能 | CMSでのページ編集、問い合わせフォーム | 会員登録、チャットボット、マイページ |
パフォーマンス | ページ読み込み速度最適化 | PWA対応(オフライン閲覧可) |
SEO | 検索エンジン最適化、構造化データ | メディアコンテンツ、キーワード設定 |
セキュリティ | HTTPS、XSS/CSRF対策 | 二段階認証 |
このように優先順位を明確にして区別することで、スコープやコストの試算を含め、初期段階で重要な要素に焦点を当て、追加機能を段階的に組み込む等、限られたリソースを効率的に使用しながらサイトの成長に繋げるための計画が立てやすくなります。
ポイント4:社内合意形成
冒頭に述べたとおり、要件定義はWebサイト制作に関わる人の認識を一致させるために必要となりますが、特に自社(発注企業側)の社内合意形成は、プロジェクトを進める上でも、プロジェクト完了後にも大きく影響します。
要件定義のスケジュールに計画的に下記を組み込むことで、スムーズに進みやすくなりますが、このプロセスが抜けていることが意外と多く、終盤や完了後に認識のずれが生じることも少なくありません。
1. ステークホルダーの分類
決裁者、経営陣をはじめプロジェクトに関連する部署を洗い出し、サイトのどのコンテンツにどの部署(担当者)の意見を聞くべきかを整理します。
2.要求の収集
各ステークホルダーから具体的な要求や期待を収集します。基本的には部署ごとに関連するエリアについてアンケートを実施し、必要に応じてワークショップやブレインストーミングなどの方法で意見を集め、文書化します。
3. 優先順位付け
収集した要求に優先順位を付け、リソースの制約やプロジェクトの目標に照らして実現可能なものを選定します。この過程で前項の「必須要件」と「希望要件」の前提となる大まかな要求レベルが整理されるイメージです。
4. レビューと承認
ここまでに決まったことを関係各所にレビューしていきます。
「要件の洗い出し」→「仮要件の承認」→「決定事項の共有」のように、一度に全て決めようとせず、段階的に合意を進めることが重要です。これにより関係者の負担を減らしつつ、納得感を持っていただけるよう進めます。
かけられる時間とコスト、仕様の複雑さに応じて、仮のデザインやワイヤーフレーム、プロトタイプにて合意を得る必要性も考慮し、プロジェクトの軸となる重要な機能については、早めの段階から検討を始めることが重要となります。
今回は要件定義の項目やフロー、内容というよりも前提となる考え方について説明をさせていただきました。
お客様の中には要求整理の前の、Webサイトの役割や目的の言語化の段階から設定の仕方に悩んでいらっしゃる会社様も多く、課題はあるけどうまく要求に落とし込めているか不安という声も多くいただきます。
Webサイトはあくまで、お客様のビジネスの成果に繋げる一つのツールです。プロネクサスではWebサイトを通して、企業本来の目的達成や課題解決にいかに寄与していくかをお客様と一緒に考えていきますので、まずは現状分析や戦略方針の立案からぜひご相談ください。