ここまで、コーポレートサイトリニューアルにおけるコンペの考え方や進め方について整理してきました。一方で、実務の現場では、必ずしもコンペが最適とは限らないケースもあります。
そこで番外編として、もう一つの選択肢である「指名発注」について、そのメリットと考え方を整理します。
指名発注とは何か
指名発注とは、あらかじめ信頼できる制作会社を選び、コンペを行わずに協議を進める発注方法です。
コンペに比べると、透明性や比較という観点で不安を感じる方もいるかもしれません。
ただし、条件が整っていれば、指名発注は非常に合理的で、成果につながりやすい選択肢でもあります。
最初から「腰を据えて」協議できる
指名発注の最大のメリットは、最初から腰を据えて協議できることです。
コンペでは、
- 提案の優劣
- 他社との比較
- 条件面での駆け引き
といった要素がどうしても入り込みます。
一方、指名発注であれば、
- 課題の整理
- 目的のすり合わせ
- 現実的な進め方の検討
に、最初から時間を使うことができます。
結果として、「何を作るか」よりも「なぜ作るのか」「どう進めるのか」に集中しやすくなります。
余計な駆け引きが不要になる
コンペでは、無意識のうちに、
- 少し良く見せたい
- 他社より有利に見せたい
といった心理が働くことがあります。
それ自体が悪いわけではありませんが、場合によっては現実的ではない提案や、期待値のズレにつながることもあります。
指名発注の場合、こうした変な駆け引きがほぼ不要になります。
- できること
- できないこと
- リスク
を率直に話し合えるため、プロジェクト全体の見通しが立てやすくなります。
指名でも「比較」はしてよい
指名発注というと、「最初から1社に決める」というイメージを持たれがちですが、必ずしもそうである必要はありません。
実務的には、
• 複数社と面談する
• 考え方や相性を見る
• 進め方の違いを確認する
といったプロセスを踏んだうえで、最終的に1社に絞るという形も十分に考えられます。そうすることで、制作会社が課題とどう向き合ってくれるのかを、その姿勢を含めてじっくりと確かめることができます。
なお、検討のために複数の制作会社に話を聞くこと自体は、コンペ形式であってもなくとも推奨される行為です。
「並走してくれるかどうか」は、最初の接点で分かる
これまでの経験から言えるのは、安心して並走できるパートナーかどうかは、最初の打ち合わせで、ある程度分かるということです。
- 話をきちんと聞いてくれるか
- 課題を整理しようとする姿勢があるか
- 分からないことを分からないと言えるか
こうした点は、提案書を見る前、デザインを見る前の段階でも感じ取れます。
「一緒に考えてくれそうか」「長く付き合えそうか」という視点は、大事にするべきです。
指名発注が向いているケース
指名発注が特に向いているのは、次のようなケースです。
- 課題が複雑で、整理から一緒に進めたい
- 社内調整が多く、柔軟な対応が求められる
- 中長期での運用・改善まで見据えている
このような場合、比較よりも対話を重視した方が、結果的にプロジェクトはうまく進みやすい傾向があります。
コンペか指名かは「目的」で決める
大切なのは、コンペか指名かという手法そのものではありません。
- 何を実現したいのか
- どんな関係性を築きたいのか
- どこに時間を使うべきか
これらを踏まえたうえで、最適な方法を選ぶことが重要です。
コンペは比較に強く、指名発注は対話に強い。それぞれの特性を理解したうえで使い分けることが、発注側にとっても、制作側にとっても健全な進め方につながります。
まとめ
指名発注は、「手を抜く選択」ではありません。
むしろ、「しっかり話す」「しっかり考える」「しっかり向き合う」覚悟が必要な発注方法です。
コンペであれ、指名であれ、最終的に大切なのは、一緒に前を向いて走れるパートナーかどうか。
指名発注は、比較をやめることではなく対話を選ぶこと。
この連載が、その判断の一助になれば幸いです。
2026/08/27
